チリンの鈴その後 [アニメーション]
その後「チリンの鈴」についていろいろ調べてみたのだが、『チリンの鈴』のオリジナルは、究極にはサンリオ出版の『十二の真珠-ふしぎな絵本-』に行き着くことがわかった。そう、あのアンパンマンのプロトエピソード(アンパンマンが人間)が収録されている「トリビアの泉」でも紹介されたあの本だ。
「チリンの鈴」の原型は、こういう感じになっている。
子羊チリンは、牧場で父母に大切に育てられていた。牧場のそばの岩山にはウォーという狼が住んでいて、母羊たちは「いいこにしていないとウォーがくるよ」と子供たちに諭していた。
ある日牧場近くの岩山に住む狼ウォーが牧場を襲い、チリンの母もチリンをかばって死んだ。
その後チリンは岩山に登りウォーに会いに行く。そしてウォーが好きだ、ウォーに弟子入りしたいという。
ウォーはチリンを気に入り、弟子にすることにする。
ウォーに鍛えられつつ、チリンは成長し、角も生え、まるでウォーにそっくりの精悍な姿になった。
ある日ウォーはかつてチリンが住んでいた牧場を襲うという。そしてまさに羊が襲われる瞬間、チリンはウォーを突き殺した。
「母のかたきっ」チリンはウォーに鍛えられつつ、ウォーを倒す機会を狙っていたのである。自分を倒すほどに成長したチリンをみて、ウォーは安堵したかのように死んでいく。
しかし、敵をとったチリンはもう既に「羊」ではなくなっていた。もうチリンは農場には戻れない。チリンは自分を鍛えていたウォーの事を思いつつ、岩山で孤独に生きていくのであった。そう、ウォーのように。
夜が近づき、遠く岩山からの風にのってチリンの鈴の音が聞こえてくるころ、母羊は子羊にこういう、「いいこにしていないとチリンがくるよ」
大筋では絵本やアニメーションと同じだが、トラウマ度がズンドコに高い。
後書きによれば、このエピソードは当時マカロニに凝っていたやなせたかしがマカロニの復讐劇をモチーフに書いたものらしい。当初、ページ数の関係で不完全なまま発表しており、この『十二の小さな真珠』で初めて完全な形にリライトしたのだそうだ。
この原作を元にサンリオフィルム版を考えてみると、かなり良くできていると思う。チリンを観て怯える羊とかね。しかし、子羊のチリンが「ウォー、ぜったいかぁさんのかたきをとってやるぞお」と言ってる辺りはちょっと長い。もちろん伏線というかわかりやすくしようとしているのはわかるが、この部分をもっとウォーとの交流に費せば、よりマカロニらしく、より劇的に、よりトラウマ度も上がったのでは、と思う。サンリオの人は怒っただろうけど。(サンリオフィルムって『南極物語』以外ほとんど赤字だったらしいし)
「チリンの鈴」というタイトルの意味ももっと明確にするべきだったと思うが、そうなったら子供たちは明らかにトラウマのズンドコに落ちただろうなぁ。
『十二の真珠-ふしぎな絵本-』は他にも良い話がいっぱい収録されているのだが、現在絶版。復刻…しないかなぁ。改変せずに。
絶版中。売ってません。
復刻された絵本。
80年代サンリオで作られたアニメ版。
お邪魔します。復刊されましたよ〜
■『十二の真珠 -ふしぎな絵本-』(最終得票数 110 票)
http://www.fukkan.com/fk/CartSearchDetail?i_no=68320726&tr=s
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【著者】やなせたかし
【発行】復刊ドットコム
【定価】1,890円(税込み)
【発送時期】2012/10/上旬
by ナビ (2012-09-25 18:13)