No.1259 ハイ・シェラ 特別版 [DVD]
8年の間刑務所にいたロイは、特赦で出所する。シャバを満喫し、昔のボスの元へ向かうも、組織は警官上がりの見知らぬ野郎が幅を利かせている。ホテル強盗の仕事を受け、向かったアジトにいた仕事仲間はドシロウトの若造共で、仕事に女まで連れている。女マリー(アイダ・ルピノ)は、ロイに邪魔をしないから追い出さないでと懇願する。クールなプロであるにもかかわらず、情には厚いロイは、マリーを残すことにする。この情と8年というブランクがロイを破滅に追いやるのである。ボスは不治の病で死にかけており、もはやプロのギャングが幅を利かせる時代ではなくなっていた。ロイは既に時代に取り残されていたのだ。
W・R・バーネットの原作をもとに本人が脚本を書き(ジョン・ヒューストンと共同)、ラウール・ウォルシュが監督したギャング映画の傑作。
ファースト・ロールはヒロインのアイダ・ルピノだが、実質的主演はハンフリー・ボガートだ。1936年の『化石の森』で、本格的に映画スターとなったボガートだったが、ギャング映画の悪役ばかりで、芽が出ることはなかった。ロイ・“マッドドッグ”・アール役は、ジョージ・ラフトやポール・ムニら主演級ギャング俳優が演じる予定だったが、彼らは出演を断り、このチャンスを活かした次候補ボガートは情熱的な演技で、見事一流スターの仲間入りをしたのである。
ラフトやムニが出演を断ったのもわかる気がする。主人公ロイ・アールはついていない男、時代に取り残され破滅した男なのだ。それはスターの最悪の結末と等しい。ラフトもムニもロイの結末に己の悪夢の未来を見たのかも知れない。
視聴して、ラストがロケであること、主人公が壮絶に死ぬことからなんとなくアメリカンニューシネマの先鞭のような気がした。しかしよくよく考えれば、勧善懲悪の観点から、ギャング映画の主人公は皆無惨に死んでいくのである。
アジトでロイが可愛がる犬はボガートの本当の愛犬”ゼロ”。元気がよくて大変可愛い。
DVDの特典は、ドキュメンタリーと予告編集。★★★★。
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