SSブログ

ピンクパンサーとDFEについて (書きかけ原稿お蔵出しシリーズ) [アニメーション]

 確かToon Guide 3用に書き始めたんだけど、後述の事情で書くのを止めた原稿だな、これは。
---
 長身で最高にクールなピンクな豹、アニメーション界のスマートガイ、ピンクパンサー。2004年は彼の生誕50周年に当たり、映画やアニメーションのDVDや多くのキャラクターグッズが展開され、映画第一作のリメイクも企画された。そして2年が過ぎ、映画『ピンクパンサー』の日本公開も終了した。50周年のイベントも一区切りついたということだろうか。いい機会なので彼の生い立ちについて解説していこう。

 まず始めに、映画監督のブレイク・エドワースが登場する。1962年エドワーズは、新作映画の脚本に取り組んでいた。作品のタイトルは『ピンクの豹 The Pink Panther。』エドワーズは、この映画のマスコットとして、≪ピンクの豹≫のキャラクターを作ることを考え、1963年2月アニメーション製作会社ディパティエ=フリーレングエンタープライズ(略称:DFE)にキャラクターデザインを依頼した。

 DFEは、1963年のワーナー・ブラザーズ・アニメーション・スタジオ閉鎖によって生まれた新興スタジオで、当時のワーナー・ブラザーズ副社長の息子で、ワーナー・アニメーション・スタジオを管理していたディビッド・H・ディパティエが、スタジオの主要アニメーターのひとりで大ベテランのフリッツ・フリーレングと組んで立ち上げた会社である。会社は、ワーナー・スタジオ閉鎖後そのままの場所(所謂ターマイトテラス)を借りて仕事をしており、チャック・ジョーンズの不在を除いてワーナー・スタジオとほぼ変わりない。しかし、ワーナーの短編アニメーションの仕事は当然終わっており、設立当初は他の新興スタジオと同様にCMの仕事をして糊口をしのいでいた。ピンクパンサーのデザインは、DFEにとって初めての大口仕事だったのだ。

この依頼に、フリーレングとスタッフ達は、100種類を超える≪ピンクの豹≫のデザインを用意した。エドワーズは、スタッフのひとりハウリー・プラットのデザインしたスマートな豹を採用した。これがピンクパンサーの誕生である。

 エドワーズはこの豹のキャラクターを便せんや自分の名刺に刷り入れるなどしていたが、この豹を映画にも出そうと思いつき、タイトル部分の制作をDFEに依頼した。これがアニメーション界におけるDFEの大きな一歩となった。

映画タイトルの監督はフリッツ・フリーレングとハウリー・プラットが担当し、1963年の後半に映画が完成、試写が行われた。試写の観客は自己主張するスマートな豹を多分に気に入り映画は評判となった。彼の人気を象徴するように、以降ハリウッドのみならず映画業界ではタイトルにアニメーションを用いるのがブームとなった。

 映画『ピンクの豹』もヒットし、1964年には主人公のひとり、クルーゾー警部を主人公とした続編『暗闇でドッキリ A Shot In the Dark』が作られた。もちろんタイトル・アニメーションは、DFEが担当している。この製作とほぼ同時期、プロデューサーであるハロルド・ミリッシュから配給のユナイテッド・アーティスト(現在のMGM)にピンクパンサーを主演とした短編シリーズの企画が、もちこまれ、その際に『Suspense Account』という短編が製作された。これがピンクパンサー短編の第一号であるが、あくまでパイロット版であり、未だ一般には公開されていない。

この企画は見事に実り、1964年の年末、第一作『ピンク騒動 The Pink Phink』が公開された。
 監督は、フリッツ・フリーレングとハウリー・プラット。映画タイトルと同様に、パンサーは一言も喋らないキャラとした。この設定をふくらませて、脚本のジョン・ダンがサイレントコメディのギャグを洗練したストーリーを用意し、プラットのモダンなレイアウトとキャラクターを音楽とタイミングを合わせる事を得意とするフリーレングがヘンリー・マンシーニの“ピンクパンサーのテーマ”とギャグのタイミングを完璧なものとした。

完成した作品は、1964年度のアカデミー賞短編アニメーション部門に輝き、DFEの名を一気に広めることとなった。
 日付は前後するが、ピンクパンサーのヒットに反応したワーナー・ブラザーズも、2月にルーニー・テューンズの制作をDFEに依頼、映画のルーニー・テューンズが再び(正確には三度)制作されることとなった。

 つまり1964年は、TVの誕生以来徐々に勢力を弱められていた短編アニメーション映画が、ピンクパンサーというキャラクターによって一時期ではあるが盛り返した年と言うことができるだろう。
---

はいっ、ここまで!

 この後を書こうとすると、基本的に『ピンクパンサークロニクル』の書き写しになっちゃうのね。
 やじゃーん、そういうの。粋じゃないじゃ~ん。

 だから続きが知りたい方は、『ピンクパンサークロニクル』を買いましょう。いい本ですよ。


ピンクパンサー クロニクル

ピンクパンサー クロニクル

  • 作者: ジェリー・ベック
  • 出版社/メーカー: ABC出版
  • 発売日: 2006/02/15
  • メディア: 大型本



 『ピンクパンサークロニクル』に載ってないことと、これ以降書こうと思っていたメモがコレ。

 ・森卓也が『アニメーションのギャグ世界』を書いた分析を要約すると「パンサーが加害者となる作品が面白い」というもので、これについては大賛成。
 但し、パンサーの持ち味は、人に気付かれずに何かをしていくところであり、加害者と言ってもバッグス的な復讐モノは輝きが一段落ちてしまう。
 そして、パンサー世界では無生物(コイン、タイヤ、石など)が、物理法則を無視して動き回り、パンサーがそれを追いかける等というギャグが多い。
 これは「荷車からこぼれたカボチャ」などの特撮を用いたサイレントコメディからの引用かもしれない。

・1966年に『ピンク騒動 The Pink Phink』とよく言えば同傾向の、悪く言えば焼き直しの『ドリーム・ハウス The Pink Blueprint』が公開された。面白い作品で、アカデミー賞にノミネートされた。

・ピンクパンサーの短編は、70年代に数シーズン「バッグスバニー・ショー」の様なTVシリーズとなった。TVで放映されている間は、映画用のパンサー短編は作られず、他のシリーズ(アリとアリクイなど)が公開されていた。

・1979年UAとの映画短編供給契約が完了。ピンクパンサーは完全にTVに活躍の場所を移す。(The All New Pink Panther Show)しかし作品のクオリティは一段と落ちている。

・ピンクパンサーの音楽は、初期がウィリアム(ビル)・ラバ、中期がウォルター/グリーン、The All New Pink Panther Show、つまりTV時代はプロデューサーデビッド・ディ=パティエの息子スティーブ・ディ=パティエが担当した。

・1980年、永遠のクルーゾー警部ピーター・セラーズが亡くなり、ピンクパンサーとDFEの運命はおおきく揺れ動くことになる。1981年5月の TVスペシャル「Pink At First Sight」放映後、デビッド・ディパティエ会社の権利を売却する。売り先はMarvel Production。あのマーヴルである。スタジオは以降超人ハルクや、スパイダーマンのTVシリーズを制作していく。

・フリッツ・フリーレングは、この時期、3本のLooney Tunes長編の監督している。

・更に1984年、マーヴルコミックスのアニメーション部門はサバン・エンターテイメントとして独立する。そう、あのパワーレンジャーやドラゴンボールのアメリカ版を制作していたサバン・エンターテイメントである。

・この年の後半、ピンクパンサーがTVシリーズで復活する。但し、『The Pink Panther and Sons』として。制作はハンナ・バーベラ。そう、悪名高きSon物のひとつである。

・ピンクパンサー自身の復活は、パンサー誕生30周年に起きた。1993年ロベルト・ベニーニ主演の実写映画『ピンクパンサーの息子』の公開と同時期に、MGMテレビジョン制作によりTVシリーズが制作された。
 ピンクパンサーを始めDFEのキャラクターが総登場する本作では、殆ど喋らなかったパンサーが普通のカートゥーンのように喋るようになった。
 パンサーの声は、原語では『マックス・ヘッドルーム』のマックス役でおなじみのマット・フルーワー。日本版は石井“ジョジョ”康司が担当している。なお声でにぎわせる日本版ナレーターは山口勝平が担当している。
 ちなみにMGMテレビジョンは、当然のことながら、旧MGMとは全く関係のないUA系列の会社。
 このシリーズ放映終了後、ヘンリー・マンシーニが亡くなっている。
 また、1995年の長編アニメーション『ペンギン物語~きらきら石のゆくえ~ The Pebble and the Penguin』の併映として、シリーズ内の“Driving Mr. Pink”というエピソードが公開されている。

・2001年サバン・エンターテイメントを含むサバン・グループは、ディズニーに買収された。現在の会社名はJETIXという。

・誕生40周年記念となる2004年はDVDのリリース、映画のリメイクが主で、アニメーションの復活はされなかった。安室奈美恵のPVくらいか。しかしパンサーには次がある。誕生50周年の2014年を気長に待ちたい。
---
 その前にリメイク版ピンクパンサー2もあるしね。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アニメ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。